二十四節気 ー芒種ー 6月5日〜6月20日ごろ

2026.5.31

二十四節気 — 第九節

◎芒種(ぼうしゅ)雨を味方に、暮らしを整える季節。

雨音が少し心地よく聞こえるようになるころ、暦は「芒種」を告げます。

六月六日ごろに訪れる芒種は、二十四節気のうち第九番目にあたります。

「芒(のぎ)」とは、稲や麦などイネ科の植物の穂先にある、細くとがったひげのこと。その芒をもつ穀物の種をまく季節——という意味がこの節気の名前に込められています。

ちょうど梅雨入りとも重なるこの時期、空は低く曇り、雨の日が続きます。外出が億劫になったり、気持ちが沈んだりすることもあるでしょう。けれど、農家の人々にとってこの雨は、田畑に水をもたらす恵みそのもの。芒種の雨は「瑞雨(ずいう)」とも呼ばれ、豊穣を約束する吉兆とされてきました。

見方を変えれば、梅雨は暮らしを見直す好機。

今日は、芒種のころに取り入れたい暮らしの習慣をいくつかご紹介します。

 

▲この季節に咲く草花。お庭や公園で見つけてみてくださいね

◎芒種を彩る草花

雨粒が葉を叩く音が心地よく聞こえるころ、野にも庭にも、この季節だけの花が咲いています。梅雨入りとも重なるこの時季は雨の日が続きます。

外を歩くのが億劫になりがちですが、少し立ち止まって足元や軒先に目を向けると、雨によって生き生きと輝く草花たちと出会うことができます。

雨が続きますが暮らしの中での楽しみ方を見つけるのも良いですね。

◎芒種の暮らしを楽しむ

芒種のころになると、青梅が市場に並びはじめます。梅仕事——梅酒、梅シロップ、梅干し——は、日本の初夏の暮らしに欠かせない手仕事のひとつです。

梅酒は、青梅・氷砂糖・焼酎をガラス瓶に漬け込むだけで作れる、最も手軽な梅仕事。仕込んでから三ヶ月ほどで飲み頃になります。梅シロップは、酢を少し加えると発酵を抑えながら早く仕上がり、炭酸水で割れば夏の清涼飲料に。

梅干しは少し手間がかかりますが、塩で漬けてから土用干しまで、約二ヶ月かけてじっくりと仕上げます。自分で漬けた梅干しは、市販のものとはひと味違う愛着が生まれるもの。ぜひ一度、試してみてください。

梅仕事の魅力は、季節とともに「待つ」という感覚を取り戻してくれること。結果をすぐに求めがちな日々の中で、瓶の中でゆっくりと変わりゆく梅を眺める時間は、心の余白を広げてくれるようです。

梅以外にもフルーツ漬けなど お好きな果物を用いたり

ミントなどのハーブを併用するのもおすすめです。

▲ 芒種のおすすめ食べ物 6種(梅・とうもろこし・新しょうが・そら豆・鮎・しらす)

◎六月の旬を、からだに取り入れる

芒種(ぼうしゅ)を迎えるころ、台所に旬の恵みが届き始めます。青梅、とうもろこし、新しょうが、そら豆、鮎、しらす——どれも六月ならではの食材で、梅雨の湿気にくたびれた体を、内側から元気づけてくれるものばかりです。難しいことは何もありません。旬のものを選び、シンプルに調理する。それだけで、芒種の食養生になるのです。

▲ 芒種におすすめのうつわ 3種(ガラスの器・竹製の器・染付の器)

◎芒種のうつわ。季節の料理を、もっと美しく楽しむ

料理の味は、盛りつけるうつわで変わります。

六月の食卓には、この季節に似合ううつわを。

芒種のころの食卓は、色とりどりの旬の食材で賑わいます。みずみずしいそら豆の緑、とうもろこしの黄、梅の青、しらすの白。それらを引き立てるのは、料理の腕だけではありません。どんなうつわに盛るかによって、同じ料理がまるで違う表情を見せてくれます。

今回は、芒種の時季にとくに映えるうつわを三つご紹介します。素材と佇まいの異なる三つのうつわは、それぞれに夏の食卓をいろどる力を持っています。

雨でお家時間が長くなるので、こうして毎日の食事を楽しむのもおすすめ。
うつわを変えると、いつもの料理が違って見える——それが、うつわ選びの醍醐味です。今年の芒種は、一つだけ新しいうつわを迎えてみませんか。季節の料理を盛るたびに、食卓が少し楽しみになるはずです。

 

▲ 梅とささみの冷やしそうめんの作り方(5ステップ)

◎いつものおそうめんもワンランクアップ。栄養価も高いさっぱりたのしむそうめんレシピ。

このレシピの楽しみのひとつが、盛りつけです。氷水で締めた白いそうめんを器に丸く盛り、その上にささみ、梅肉、きゅうり、オクラ、ミニトマト、大葉を彩りよく並べていく。緑・赤・白が折り重なる様子は、食べる前からすでに夏の食卓を予感させます。

ガラスの器に盛ればいっそう涼しげに、染付の器に盛れば和の趣が増します。仕上げに冷やしためんつゆをかけ、お好みで白ごまやみょうがを添えれば完成。みょうがの香りは、梅の酸味とよく合い、夏らしい一皿を引き締めてくれます。

梅雨の食欲が落ちた日も、旬の梅の酸味がからだを動かしてくれます。冷蔵庫にある野菜で自由にアレンジできるのもこのレシピの良さ。茗荷や貝割れ菜、蒸し鶏を加えてもおいしく仕上がります。

◎ 芒種の日に始めたい、大人の稽古ごと

「6歳の6月6日に習い事を始めると上達する」——そんな言い伝えが、日本には古くから伝わっています。

この風習は、能楽を大成した世阿弥の教えに由来するとされています。「6」という数字を指で数えるとき、小指から折り始めて六つ目で親指が立つ——その形が「子が立つ」すなわち「一人前になる」を意味するとして、六月六日は稽古始めの吉日とされてきました。

子どもが習い事を始める日として語られることが多いこの言い伝えですが、大人の暮らしにも十分に当てはまります。新しい趣味、長年気になっていた習い事、後回しにしてきた勉強や創作活動——何かを始めるのに、年齢は関係ありません。縁起のよい六月六日という日を、背中を押してくれる理由にしてみてはいかがでしょうか。

◎ 芒種の特集を終えて

梅雨の季節は、どうしても「早く終わってほしい」と思いながら過ごしがちです。けれど今年は、芒種という節気を入り口に、この季節を少し違う目で見てみませんか。

雨に濡れた紫陽花の色、青梅の甘酸っぱい香り、氷水で締めたそうめんの冷たさ、新しい稽古の緊張感——どれも、梅雨だからこそ感じられるものです。特別な旅に出なくても、台所に立つだけで、道端の花に目を向けるだけで、季節はちゃんとそこにあります。